不公平な税制 その2 国税庁 会社標本調査(2016)より
法人税の不公平な税制について調べていますと必ず出てくる税制として、「受取配当等の益金不算入」という制度があります。
受取配当等の益金不算入とは
この制度、簡単に言いますと、会社が別会社の株式を保有していて配当をもらったら、その配当収入についてはその一定割合を利益としてカウントしませんよ。ということです。
さらに、その株式の保有割合が上がれば上がるほど(関連会社や子会社となるほど)そこから受ける配当については課税も緩めますよ。というものです。
中小企業は子会社や関連会社を持つことは稀で、関連会社から配当を受け取ることは更に稀なので、大企業向けの優遇税制ということになります。
それなら配当をもらえるだけ力をつければいいのに、ということではなく論点は、そもそもこの優遇税制は必要なのだろうか、ということです。あくまで税制が富の再分配機能として働いているかどうか、です。
目的は二重課税の排除
配当は、法人税が課税された後の残った利益(剰余金)から出されるものです。株主である法人は、この課税後の利益の分配を受け取るわけですから、受け取った法人の収益として課税されると、二重課税となるわけです。ですので、これを排除しましょう、ということです。
この受取配当等の二重課税の問題は、過去の税制調査会の議論(法人課税DG)においても「ある種の神学論争」と表現されていたように、議論をすると結論が出ない問題でもあるのです。
その論点は、「そもそも配当を受け取るとそれは二重課税なのかどうか」です。
別の法人が受け取った収益なわけだから、それは単純にその法人が課税されるべき収益だという考え方ですね。
この論点は法人本質論と言うものがあり「法人実在説」と「法人擬制説」といった考え方で議論があるところなのですが、脱線してしまいますので、ここでは触れません。
現在の税制では、これを二重課税だとしています。
会社標本調査(2016)
そして、会社標本調査の結果が凄いんです。
・受取配当等の金額と益金不算入の適用額
・外国子会社からの受取配当等の益金不算入額
をまとめたものです。
それぞれ1社当りの益金不算入額を記載しております。
この表から、資本金別で見たときに、法人の規模が大きくなればなるほど、益金不算入の適用額が大きくなっていくということが分かります。
試験研究費の特別控除のときと同じですね。
1社当りの適用額に着目しますと次のことが伺えます。
資本金1億円以下の中小法人の受取配当等の益金不算入の適用額は、1社当り374,894円であるのに対し、
資本金100億円の大法人の受取配当等の益金不算入の適用額は、1社当り3,913,097,287円(39億円)です。
その差は1万倍以上です。
この金額が、利益から排除されますので、その分法人税を免れます。
仮に実効税率が34%とすると、中小法人の場合12万円を、大法人の場合13億3,000万円の法人税を払わないで済む、ということですね。
まとめ
配当を出せるということは、それだけ余力がある、ということです。
出す側もそうですが、受け取る側もその分余力があります。
つまり、担税力(税を負担する力)があるということになります。
そして上記の通り、それは主に大法人です。
担税力が異なるのであればそれに応じた課税をする、という考え方を応能負担の原則とか垂直的公平と言います。
配当というものは現金そのものの収益ですから、それをもって税を払うことは出来るのか、出来ないのか、と言えば出来ます。
また反対に、二重課税かそうでないか、と言えば二重課税です。
しかし、ガソリン税のように二重課税が存在しているのも税制です。
憲法では租税法律主義(84条)が規定されていますが、税制は決めれば決まってしまいます。
そして、応能負担の原則もまた憲法による要請です。(13条、14条、25条、29条)
あとは、なぜ決めるか、ですね。