キャッシュレス還元事業と源泉所得税の共通点

キャッシュレス決済とポイント還元事業の近況

Paypay、楽天ペイ、LINE Payなど、様々なキャッシュレス決済手段が数年前から登場していましたが、急速に普及が始まったのはここ最近です。

もちろん10%への消費増税に併せて始まったキャッシュレス決済によるポイント還元のおかげです。

日経新聞の記事によると、セブンイレブンでのキャッシュレス決済の割合が、増税前後で7ポイント上昇し42%となったそうです。

これは、政府目標である2025年までに40%、というものを既に上回っている数字です。

キャッシュレス決済

しかしながら、現状の日本のキャッシュレス決済比率は18.4%と、世界に目を向けると日本のキャッシュレス決済比率がいかに低いかが分かります。

世界のキャッシュレス決済比率

(経済産業省 キャッシュレス・ビジョンより)

 

韓国が突出していますが、その他の欧米諸国も4割~6割程度となっています。

2025年の目標2015年の諸外国の水準ですので、日本は10年遅れていると言われるのも頷けます。

 

 

キャッシュレス化が進まない理由

諸外国では、金融危機による生産性向上の必要性や、現金(銀行)の強盗事件の増加による犯罪対策、その他の理由により2000年前後からキャッシュレス化の必要性が強まり、2010年前後に政府主導によるものや大手スーパーの導入による急速な普及がなされ、現状では上記のような利用率となっています。

日本においても、2001年11月にSuica等の電子マネーが登場し、非接触端末の導入も進められましたが、これまで駅・バス以外でのキャッシュレス化が進んだという印象はあまりなく、そこからの普及率についても諸外国と比べると鈍いものとなっています。

 

その理由として、以下のような諸外国には無い日本特有の事情が存在します。

1.盗難の少なさや、現金を落しても返ってくると言われる「治安の良さ」

2.きれいな紙幣と偽札の流通が少なく、「現金に対する高い信頼」

3.店舗等の「POS(レジ)の処理が高速かつ正確」であり、店頭での現金扱いの煩雑さが少ない

4.ATMの利便性が高く「現金の入手が容易」

(経済産業省 キャッシュレス・ビジョンより)

 

実際に、店舗等がキャッシュレス支払(クレジットカード)を導入しない理由について、以下のような実態調査の結果が出ています。

1位手数料が高い42.1%
2位導入によるメリットを感じられない35.7%
3位現場スタッフによる対応が困難32.1%
4位クレジットカード決済を要望する声が少ない29.3%
5位導入費用が高い25.7%

(経済産業省「観光地におけるキャッシュレス決済の普及状況に関する実態調査」より編集)

2位の「導入によるメリットが感じられない」というのは、導入前から思える理由ということですから、相当程度に需要が感じられないのだろうと思われます。

ここには出ていませんが、中には「現金のほうが信用できる(14.3%)」という理由もあり、インターネット通販が普及し始めた当初と同様、やはり目に見えないものへの不信感・不安感というものはある程度感じられていることが分かります。

 

逆に、消費者側の理由としては、「キャッシュレス支払に対応していない実店舗等の存在」や「浪費しそう・感覚が麻痺しそうだから」などの不安が挙げられていました。

オーストラリアでキャッシュレス決済が普及したきっかけは、国内2大スーパー(Coles,Woolworths)がキャッシュレス決済を導入したことでした。キャッシュレス決済の利用者が増え、不信感・不安感も消えていくという流れを考えると、どうしてもまずは実店舗側がそのデメリットを飲んで導入するという必要があるのかもしれません。

 

キャッシュレス決済の問題点

キャッシュレス決済にも問題点はあります。

キャッシュレス決済比率が2016年で51.5%であるスウェーデンでは、その問題点も指摘されています。

スウェーデン国内には銀行の支店が約1400有りますが、その半数が現金の預金を受け付けていないそうです。そして、80歳以上の高齢者など、新しい技術についていけず現金以外の使い方が分からない層も一定数存在します。

新技術が開発されるときは必ずこういった問題が残ります。
それがお金そのものの問題ですので、国によるある程度長期間のフォローが必要となってくるでしょう。

中央銀行

 

ビッグデータと個人情報

消費税増税が迫っていた中で、ポイント還元のシステムとして、レジで個人番号カードをかざすという案が一時期出ていました。

行政と実店舗の対応が間に合わないなどの問題があったのか、この案はすぐに消えましたが、キャッシュレス決済の目的の一つでしょう。

全ての取引データが電子化され、更に個人情報まで紐づけされることになると、全国民の所得のデータが瞬時に把握されることとなります。

把握される側としては、それ自体に問題はありませんが、やはり問題は情報漏洩です。

米会計検査院の報告では、米国内のなりすましによる被害額は、2013年に58億ドル(約6,200億円)とのことです。

 

まとめ

キャッシュレス決済も、番号法(マイナンバー法)も、消費税法(インボイス制度他)も、ひいては労働基準法なども、それぞれ犯罪行為やブラック企業など社会問題が存在し、一面ではそれらを防止・抑制するために創設・改正されています。

もちろん人手不足という社会問題があり、生産性向上という目的があることもありますが、ルールが必要であることは当然のことながら、全うに過ごしている大半の人達の負担は、少数の犯罪者などのおかげで生まれている側面も存在します。

そして、税と社会保障と災害対策という建前の下、犯罪防止の目的を持ちつつ作られたマイナンバーそのものが漏洩し、犯罪に利用されているという事実も存在するわけです。

 

 

キャッシュレス決済推進のために、国がポイント還元事業に力をいれているのを見たときに、そもそもの目的(国としてのうまみ)は何だろうと考えました。国は、社会保障のための負担が年々増加していくことは承知しています。その中で2,798億円(H31年度のポイント還元事業の予算)もの支出を伴ってでも推進したい理由は、やはりそれだけのリターンがあることだと思います。それは最終的にキャッシュレス決済から自動的に申告データへと繋げていくための道筋なのではないかとふと思ったとき、何となく自動的に納税される源泉所得税と似てると感じました。

 

源泉所得税はサラリーマンの自己申告では正しく徴税出来そうにないがために生まれた制度です。会社が徴収のコストを負担することにより、自動的に給料から差し引かれ、気付かない内に会社が納税義務者として納付をし、国の安定した収入となるわけです。

 

決済比率100%を目標とするキャッシュレス決済の推進は最終的には所得税・法人税・消費税を自動的に集計するための手段かもしれないという意味において、また、今回の消費税増税による痛税感がないという意味においても源泉所得税と同じ目的でポイント還元事業などが行われているようにも見えます。

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