このタイミングですか、、、ふるさと納税見直し
「見直す」と言われ続けてすでに結構な時間が経過していますが、とうとう本気の見直しがアナウンスされましたね。
2017年にそれまではやりたい放題だった「返礼品(サービス)」について、限度・・・3割以下、内容・・・地産品(サービス)に限定してくださいとのお達しが出たのですが、まだまだ従わない自治体が多いので、今回はとうとう法的拘束力を伴うやり方で進めていくようです。
なんでそんなに厳しく律するのだろう?
あくまでも「お礼の品」なのだから、それがいくらだろうと何だろうと問題ないのでは?
と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私も気になるので少し考えてみました。
そもそも、ふるさと納税とは?
「ふるさと納税」制度がどのような経緯・理由から創設されたのか、については「ふるさと納税研究会報告書」に詳述されています。
多くの国民が、地方のふるさとで生まれ、教育を受け、育ち、進学や就職を機に都会に出て、そこで納税をする。その結果、都会の地方団体は税収を得るが、彼らをはぐくんだ「ふるさと」の地方団体に税収はない。そこで、今は都会に住んでいても、自分をはぐくんでくれた「ふるさと」に、自分の意志で、いくらかでも納税できる制度があってもよいのではないか、、、さらには総務省のふるさと納税ポータルサイトに「そもそも・・・」の部分が書かれています(⇒http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/about/)。
そしてそして、3つの意義がありますよ~という解説までされています。
- 第一に、納税者が寄附先を選択する制度であり、選択するからこそ、その使われ方を考えるきっかけとなる制度であること。
それは、税に対する意識が高まり、納税の大切さを自分ごととしてとらえる貴重な機会になります。 - 第二に、生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域に、これから応援したい地域へも力になれる制度であること。
それは、人を育て、自然を守る、地方の環境を育む支援になります。 - 第三に、自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進むこと。
それは、選んでもらうに相応しい、地域のあり方をあらためて考えるきっかけへとつながります。
やわらかい言葉、分かりやすい言葉、耳当たりの良い言葉で書かれていますから、ついつい「納得できるなぁ」なんて思ってしまいますが、実際のところはどうなんでしょうね?
人口が多く大企業も多い都市部は税収も多い。
それ以外の地域では人口流出や自然減で人口が増える可能性は少なく、人口が減れば経済規模も縮小していくことから、今後も税収が増加する見込みは薄い。
となると、地方行政サービスの地域格差がますます広がってくることが予想され、社会保障費が膨らみ続ける現在の状況で国が継続的にその格差を埋め合わせをすることは難しい。
そこで、国のお金を地方に渡すのではなく、地域間で財源の移転が行われるという仕組みを考えだしたのだと思います(地方間の税収格差是正)。
それゆえ、地域同士が「営業努力」をすることで、少しでも多くのふるさと納税を競争しながら獲得するのは当然予定されていたことなのだと思います。
商品の売価を設定したり、原価を切り詰めたりは経営者なら誰しもやっていることですし、それを「想定外」というのであれば、当初の見込みがあまりにも甘かったといわざるを得ません。
なんで規制?
9月1日付で「ふるさと納税に係る返礼品の見直し状況についての調査結果(平成30年9月1日時点)」(⇒http://www.soumu.go.jp/main_content/000573243.pdf)が発表されていたのですが、そこには「総務省の言うことを聞かない自治体はここですよ~」ということを伝えたい!!という内容になっていました
具体的には、地場産品以外の返礼の品を用意している自治体、返礼割合が3割を超える自治体名、特に「悪質」な返礼割合が3割を大きく超える(37.9~65%)自治体名および今後の取組(見直し意向の有無、取止めの予定について)などが記載されています。
そして、この調査結果を受けて、冒頭の発表がなされたわけですが、、、。
やっぱり、
なんでそんなに厳しく律するのだろう?
あくまでも「お礼の品」なのだから、それがいくらだろうと何だろうと問題ないのでは?
これらの疑問に行き着きます。
以下は私見ですから、読み流していただければよいのですが、、、
地場産!!
地方の様々な産業を育てるという意味では「地場産」にこだわる必要があるという理由はよくわかります。この制度が作られた趣旨にも合致すると思います。兎にも角にも地方にお金が回れば良い、なんて運用をしているのは、制度の悪用だということなのでしょうね。
もっとも、それなら最初からルール(法規制)でそう決めておけばよかっただけの話です。ですから規制が入るのはむしろ当たり前なんですが、この規制がその地方・地域でしかできないことや生産できない商品などを新たに生み出したり、作り出したりすることに繋がれば、それこそこのふるさと納税の目的が一つ達成できるということになるのだと思います。
高すぎる返礼割合!!
返礼割合が高いとどうなるの?
返礼割合が高くなるということは、商品売買においては「原価率」が高くなる・・・つまりは粗利率、粗利益が低くなるということです。できるだけ多くのふるさと納税を獲得するために粗利益を低くしてしまうと、実際に残るお金が減るということになります。上記の調査結果では65%もの返礼割合の自治体がありましたが、たった35%の粗利益だとすると、間接的なコストを差し引いて自治体の手元に残るお金は一体どれくらいなのでしょうか?
そもそも、そうやって獲得したふるさと納税による寄付金は、自治体の財政を補ったり、特定の政策に利用したりするためのものです。それは行政サービスの充実や特定の施策の実現と直結しているはずで、それこそがふるさと納税の目的の柱であるはずなんです。粗利益が低くなるのであればそれだけ多額の寄付を頂かなければこの目的が実現できないことになってしまいます。(もちろん、返礼割合の高さを選んで寄付をする人はその地域や自治体には興味がない人が多いのかもしれません。ですから寄付する側の意思や思いのようなものは、返礼割合の高さを規制する根拠にはなりえないと思います。)
で、結局どういう理由で規制されるの?
先ほども書きましたが、返礼割合が高いと自治体に残るお金が少なくなります。そうなると自治体の財政や行政サービスに使えるお金はあまり増えません。これが寄付者と寄付先の自治体という2者間だけで行われるという話でしたら、「寄付した人が返戻割合が高い品(サービス)を受けられてよかったね」でおしまいですが、それが全国規模で3600億円という規模で行われるわけです。そうなるとどうなるか、、、、
ふるさと納税という制度が無かったならば、3600億円は納税者の居住地の自治体に収められて、ほぼその全額が財源となり行政サービスや様々な施策に使われていたはずです。
ところが、ふるさと納税という制度がある結果、返礼の割合分だけ地方自治体に渡る金額が減ります。総務省が規制する「3割」であったとしても3600億円の収入が2500億前後になる可能性があります(極端な計算です。実際には原価のないものもあり、収入額がそれほど減るわけではありません)。
そうです、ふるさと納税の仕組みをマクロに見ていくと「自治体全体の収入総額が減る仕組み」なんです。
おそらく、総務省が返礼割合の引き下げを推し進めているのはこれが理由なのではないかと思っています。他にもいろいろと理由は言われていますが、あんまりピンとくるものが他にないんです。
ふるさと納税は使いやすい制度ですし、寄付先と返礼の品を選ぶ楽しみこそがここまでの規模になってきた理由でしょうから、「想定していた方向とはちがう!!」と規制をするだけではなく、なんとか制度の目的を達成できる形で規模も維持できるような仕組みにしていってほしいと思っています。