”値決めは経営”とはいうものの、、、
…今回も前回に引き続き、是非知っておいていただきたい、利用していただきたいものを紹介する内容です。
小売業、サービス業、製造業、etc、、、どのような業種であっても、「売る」以上はその価格を決めなければなりません。
物品を売る場合は、「仕入れ値に利益を○○%乗せて決める」などの方法で、製造業などの場合は、「原価(製造コスト)に利益を○○パーセント乗せる」などの方法で、そしてサービス業では、「直接コストとなる人件費等に○○%利益を乗せる」などの方法で決めていくことが多いのではないでしょうか。
”値決め”はその事業の現在と将来を決める重要なものであり、そうであるからこそ通常は経営者の専権事項と言われています。
売値を決める場合、「売りたい価格」と「売れる価格」にギャップがあり、落としどころを見つけていく、、、そんな作業が行われるのでしょう。そして、その場合まず最初に考えなければならないのは「買い手」のことです。「いくらなら買ってもらえるのか」は考えざるを得ない要素ですし、そこで想定される「買い手」が一般消費者なのか事業者なのかによっても、値決めにおいて考慮すべき要素が変わってくるからです。
買い手が一般消費者であれば、当該商品の原価(仕入原価、製造原価)等をベースに類似商品の価格や想定される購買者層などを考慮し決定できるでしょう。買い手が事業者となると、原価や市場の分析のほかに「価格交渉」でも金額が大きく変わってくることが考えられます。そうなると「売りたい価格」と「売れる価格」のギャップは大きくなることもあったり、もしかしたら原価を割るような「売ってはいけない価格」での契約をせざるを得ない、などというケースも考えられます。経営者自身がそのような不利な価格での値決めをすることはあまり考えられないですから、そのような値決めが行われる理由は、買い手の購買力が強かったり、業界での影響力が強かったり、大口の契約先であったり、力関係が反映されてのことであるケースが多いと考えらえます。利益をいくら残したいのか、残せるのか、残さねばならないのか、しっかり考えて決めるはずの価格が言ってみれば他人に決められてしまう、、、もしそのような値決めをしていたらあるいは値決めをされてしまっていたら、経営に支障をきたすことが容易に想像できます。
もちろん、このような「力関係による場合」のほかにも経営者に値決めの決定権がない場合があります。医療費等の「国が社会政策目的で値決めをしている場合」はもちろんのこと、フランチャイズ等の「契約に基づく場合」などが代表例ですね。経営者自身が値決めをできないということはそれだけ経営の自由度が下がるということだけではなく通常は死活問題であるのですが、医療の価格もフランチャイズチェーンで決められている価格も事業者に利益を残せるような価格で最初から設定されている「はず」です。そうでなければ「公共財」としての機能が果たせなくなりますし、これだけのコンビニエンスストアが存在している理由が説明できません。こういったケースでは値決めが事業そのものの存続を左右する要素ではなくなっているといえるのかもしれません。ただ、社会政策目的は時代によっても変わりますし、時の政権によっても変わるものです。フランチャイズ事業も売上や利益を保証してくれるものではないことが多いです。そうすると、、、「値決め」という項目からは解放されたのかもしれませんし、負ける確率は低くしてもらえているのかもしれませんが、大事な要素を他人に預けて、残ったカードで戦っていくことを要求されることになり、値決めができる経営者よりもより一層の工夫が必要になるのではないか、とも考えられます。
交渉により値決めの決定権が事実上買い手にわたってしまっている場合も、フランチャイズ契約などにより値決めの決定権が契約の中に盛り込まれている場合も、いずれも経営者の自由意思で値決めをできなくなっているケースだといえます。「経営者自らがその交渉相手を選んだんだから」、「経営者の意思でフランチャイズ事業への参画を決めたんだから」、だからその結果「値決め」が経営者自身の手から離れることがあってもそれはしょうがないし、それが自己責任ということだ、、、、ということもある意味正しいと言わざるを得ません。入口は経営者の意思であったことは間違いないですから。ところが、この問題を経営者の「自己責任」で片付けているとゼロサムゲームよろしく、規模の大きな事業者が規模の小さな事業者を飲み込んでいって業界ごとに少数事業者による寡占状態が生まれます。そうなると、新たに事業者として手を挙げる人は減っていき、既存の寡占事業者は競争相手がいなくなる。そうすると、、、、最終的に値決めは寡占事業者の独断で決められることになり、そうなると必然的に値段は高くなり一般消費者である我々が苦しめられる、、、、。
そんな社会になっちゃいけない!!ってことは国も重々承知なわけで、こんなパンフレットを用意してくれてます。
「中小企業・小規模事業者のための価格交渉ノウハウ・ハンドブック(平成30年3月改訂)」
価格を交渉をさせてもらえない、相手の指値で売らなければいけない、実際の原価からは到底肯定できない価格を押し付けられる、そんな経験をされた方、是非読んでみてください。
また、フランチャイズ事業を始めようと考えている方も実際にフランチャイズ事業を継続していらっしゃる方も、知っておかないといけない現在のフランチャイズ契約に潜む問題点をこのパンフレットで確認してみていただきたいです。
(今回のパンフレットは中小企業庁のWEBサイト(http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/pamfsystem/pamfsystem.html)においてあるものなのですが、ものによっては送料だけの負担で現物を送ってくれるそうなので、経営者同士の勉強会などの教材として使われてみてはいかがでしょうか。)
こういった問題点や一応の対策・解決法を知った上で、経営に一生懸命取り組んでいく、、、。
私達はそんな経営者を応援し伴走していきたいと考えております。