会計検査院さんから強烈な指摘を頂いているようです。
国が集めたお金が適正に使われているかどうかをチェックしてくれるのが会計検査院という組織で、憲法にも定められた何よりも公正であることが必要とされる機関・・・確かそんな風に習った記憶があります。
森友事件で国会に提出する資料などについてお役所と適正ではないやり取りがあって、謝罪していたあの機関、、、、なんですけど、本業はとにもかくにもお金の使い方をチェックするための機関です。
この機関がここのところ話題になっている「官民ファンド」の適正さについては最終的にどのような判断をしていただけるのか(今年の4月段階での報告はこちら⇒
官民ファンドにおける業務運営の状況について)、ちょっと興味があるところなのですが、私が断然気になっているのは、法人税・所得税に直接関係する指摘が2件続いたことです。
1件目 貸倒引当金の法定繰入率について
11月30日に指摘を受けたのは、貸倒引当金の繰入率についてでした。
内容や対象法人、法定繰入率についての説明はこちらから→No.5501 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の設定
会計検査院の指摘内容を掻い摘んで説明すると、売掛金には一定割合で貸し倒れるリスクがあり、そのリスクを当該事業年度の経費と同じ扱いにしてよいですよ、という制度があるんですが、この「一定割合」が実際の「貸倒実績」よりも多めに設定されていたがために、法人税が減収になっていた可能性がある・・・・ということでした。
確かに、決算を組んでいる感覚としても「過大」といえるかどうかは別として貸倒件数や金額が損金計上する貸倒引当金よりも多かった、、、なんてことはそうそうないなぁ、と思ってしまいます。
そして、毎年右肩上がりで事業年度末売掛金も毎年増えている法人であれば、確かに言わんとするところはわかります。ただ、そもそも貸倒引当金は初めて設定する事業年度以外には引当金の繰入(損金⤴、税金⤵)と戻入(損金⤵、税金⤴)が均衡することが多く、そうなるとそれほど大きく税額を下げる効果はないですし、売上減、売掛金減となって利益減となる年には逆の効果をもたらします。つまり、貸倒引当金の戻入>貸倒引当金繰入となると、実は本業での利益が減っているのに税額が増える、、、ということになるわけです。
また、中小企業の経営者の中には、実際には貸し倒れ状態になったとしても、何とか回収を図るべく売り先との交渉を続けたり、一部は値引きとして処理をして取引を継続したり、という方も少なからずいらっしゃるように思います。これが貸し倒れ実績に含まれない暗数として統計データでは拾えてないことが原因で「大幅に」ずれが生じているという見解になっているのだとすれば、会計検査院の報告の内容はしょうがないところがありますが、実態はとらえきれていない報告ということになるのでしょう。
報告内容は、中小企業はバッサリと法定繰入率過大の一言で評価、農協や組合などが細かいところまで指摘をされているというものになっていますから、事業会社である中小企業の実態がどの程度補足されていたのは報告からは読み取れません。
とはいえ、検査院の報告によれば「中小企業等の貸倒引当金の特例について、前記の適用状況や検証状況を踏まえて、関係省庁において、引き続きその検証等の基礎となる適用実績の把握等に努めるなどして、適用実態等からみて国民の納得できる必要最小限のものとなっているかなどの観点により検証を行い、国民に対する説明責任を的確に果たしていくことが望まれる。また、財務省においても、中小企業等の貸倒引当金の特例について今後とも十分に検証していくことが望まれる。」とのことですから、近い将来法定繰入率が下げられる方向で検証される可能性が高いんでしょうね。暗数を全く拾わずに表出している統計だけでいきなり引き下げる、、、なんてことにならないことを願っています。
会計検査院の報告はこちら⇒
租税特別措置(中小企業等の貸倒引当金の特例)の適用状況及び検証状況について
2件目 住宅ローン控除でミスっているパターン!?
こちらは直接的には12/11に国税庁から発表されているのですが(国税庁のページはこちら⇒(特定増改築等)住宅借入金等特別控除等の適用誤りに関するお知らせ)、ちょっと衝撃的です。
「平成25年分から平成28年分までの所得税の確定申告書を提出するなどした方のうち、最大で約1万4,500人について申告誤りの是正が必要であることが判明」したそうです。
これも、6月に会計検査院からの指摘を受けて、もう一度申告書を確認してみたら沢山の方が間違って申告していたことがわかりました、、、、とのことです。
そして、ご丁寧にも間違っている「パターン」を示してくれています。
【ケース1】(特定増改築等)住宅借入金等特別控除と贈与税の住宅取得等資金の贈与の特例について、合わせて適用を受けた場合の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の控除額の計算誤り(ケース1の詳細はこちら)
【ケース2】(特定増改築等)住宅借入金等特別控除と居住用財産を譲渡した場合などの譲渡所得の課税の特例との重複適用(ケース2の詳細はこちら)
【ケース3】贈与税の住宅取得等資金の贈与の特例のうち、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例の適用における所得要件の確認もれ(ケース3の詳細はこちら)
(以上、国税庁WEBサイトより引用)
住宅借入金等特別控除は、多くの方が恩恵を受けるもので、おそらくは使われる方がとても多い税額控除だと思います。確定申告をしなければ使えない制度ですから当然のように申告されるのでしょう。そして、ご自身でされる「初めての申告」だったりすると、「間違ってたらきっと指摘してくれるだろう」と自分にとっていいように理解して、あいまいなまま「出しちゃえ~」で済ませる方が多かったのかもしれません。ところが、間違って申告してもすべてのケースですぐに「間違ってますよ~」という指摘を頂けるわけではありません。指摘を受けなければラッキー、、、なんてことはないわけで、見つかってしまうとただではすみません。正しく納めておけばそれだけ済んだ税額になんだかんだと上乗せで払うことになります。つまり損した「気分」ではなく実際に損をします。ズルをしたくてしたわけではない、、、というのは何の言い訳にもなりません。
細かくルールと実態を確認してから適用すれば、間違わないように思うんですけど、知識がなければ実際には気付くのが難しい場合もあります。
損金経理のルールとは違って、税額控除制度全般について言えるのですが、ご本人またはご親族が申告する場合には、かなりしっかりと調べた上で、さらに税理士と相談をした上でないと間違ってしまうケースもあるかもしれない、という印象です。
逆に言えば、相談を受ける私達がこのあたりを先回りして事実の確認をお願いしたりルールの説明をすることが求められるわけで、参考にしなければならないことだと受け止めています。
ご自身の申告に不安がある方、間違っていたことに気づいた方、これから申告される方で「ちょっと確認してみたい」という方は、一度ご近所の税理士に相談をしてみてはいかがでしょう?確定申告シーズンが始まってからでは事実の確認や証憑の準備に時間がかかったりして大変ですし、早いほうがいいのは間違いありませんからね。
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