年末調整 今年の改正点とチェックポイント!!
年末調整の資料集め、記入、記入漏れのチェックetc、、、。
この時期、年末調整の担当者の方は一時的な繁忙期なのではないでしょうか?
特に今年は配布する用紙が2枚から3枚になったり(本当はもっと種類があったりするのですが・・・)、配偶者控除を受けられる方の配偶者および本人の所得要件が変更されたりといつもとは違う点がありますから、ちょっとバタバタ、、、していたりするのではないかと勝手に想像しています。
また、通り一遍の説明をうけて資料を配布されて、「○○までにお願いしますね~」と期限を切られた従業員の方々も、今年は昨年までとちょっと違う!?ってことで戸惑いがあるのではないでしょうか?
ですからおさらいと解説を兼ねて、今年の年末調整についてここで簡単にまとめておきます。
ルール変更の確認
なにはともあれ、まずはルール変更の確認です。
年末調整の担当者目線、年末調整を受ける給与所得者ご本人目線でまとめます!
用紙が2枚から3枚に!!
これまで、そろそろ年末調整だからこれ書いて~と配られていた用紙・・・「扶養控除等(異動)申告書」(用紙右上に「扶」)と「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書(用紙右上に「保・配特」)はこの2枚だったはずです。
それが、「扶養控除等(異動)申告書」と「給与所得者の保険料控除申告書」と「給与所得者の配偶者控除等申告書」の3枚になりました。2枚から3枚になったのはすぐに気づく変更点なのですが、「配偶者特別控除申告書」だったものが「配偶者控除等申告書」になったのは、よほど気にして書類の名前を見ている人でない限り気づかないだろうなぁと思っています。
要するに、これまで配っていた2枚の用紙が3枚になったということと、それに伴い、少しだけ書く内容が変わったから用紙が増えて名称も変わった、、、そんな風にご理解ください。
そして、昨年までは「扶養控除等異動申告書」さえ出していれば「配偶者控除」は何の問題もなく受けられたのですが、今年からは「配偶者控除等申告書」の提出がないと配偶者控除が受けられないことになっています。この点は注意してください!!
給与所得者本人についての変更点
これまでは自分の給料がいくらであったとしても、配偶者の方の所得が低ければ配偶者控除又は配偶者特別控除を受けられていましたから、ご自身の給与額がいくらであってもなんら気にする必要はありませんでした。今年からはご自身の給与所得がいくらになりそうか?を気にしながら年末調整をしなければなりません。実際にはご自身の給与所得が果たして12月末時点でいくらになるかなんてことはごく一部の方達(会社役員等)しかわかりませんから、結局のところ資料を集めて用紙に記入をして提出だけはしておいて、あとは会社側で配偶者控除(配偶者特別控除)の適用があるかどうかを判断されるのを待つってことになってしまいますが、年末調整を受けた12月給与の手取り額がいきなり減ってしまったのはなぜ?とならないように、「そんなルール改正があったのか、、、。」くらいには覚えておいていただきたいと思います。
また、お客様や友人から「今年から給与が1000万以上だと配偶者控除が受けられないんだよね?」という質問や相談が来ます。
確かに大まかにはその通り、、、といいたいところなのですが、毎回必ず訂正と解説を加えるポイントがあって、 それは「給与が1000万以上」という点です。
間違っている・・・とまでは言えないのですが、これらの表現ではかなり不正確で間違ってしまいますから、「揚げ足取りのようで申し訳ないのですが、、、」と断りを入れた上で、次のように訂正しています。
まず、「給与」という点です。給与とだけ聞くとそれが 「給与収入(額面額)」なのか「給与所得(給与所得控除後の額)」をはっきりさせなければなりません。 答えは「給与所得」です。
つまり、源泉徴収票の記載で言えば、「支払金額」の欄の額ではなく、その横の「給与所得控除後の金額」の欄の額の話であるということになります。給与所得控除とは、給与所得者(つまりはサラリーマンやアルバイト・パートさん)に認められた概算経費のようなもので、収入額の額面にいきなり税率を掛けて税金を課すのではなく、収入額額面から一定額を経費として差し引いた上で税金計算をしてくれるという仕組みで、この概算経費を差し引いた残りの額が基準となりますよ、ということです。
次に、 「1000万以上」という点です。 こちらは明らかに間違いです。 「以上」ではなく「超」が正しい表現になります。 「以上」という表現にこだわりたければ、「1000万1円以上」ですね。もっと言えば、1000万円ちょうどなのであれば、ギリギリ配偶者(特別)控除を受けられますよ、ということになります。
結局のところ、上記のお客様や友人からの質問や相談を正確に言い換えたやり取りをすると次のようになります。
「今年から給与所得が1000万円超だと配偶者控除が受けられないんだよね・・・?」
⇒「はい、その通りです。ちなみに、給与所得1,000万円とは 給与収入に換算すると1,220万円 なるので、もしその額を超えるのであれば、ちょっと注意が必要ですよ~」という風に言い換えたりもしています。
配偶者の所得要件に関する変更点
以前にも書きましたが(国税庁TA No.1190 配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか)、配偶者控除はこれまでと 変更なく 配偶者の所得が38万円(給与収入で言えば103万円)以下ならOKとなっています。変更が入ったのは「配偶者特別控除」です。こちらが「38万円超123万円以下」(給与収入額でいえば103万円超201.6万円未満)までOKとなったという点が変更点です。
収入額(給与の額面額)で考えるほうが分かりやすいのになぜ所得額で書いているかといえば、「扶養控除等異動申告書」も「配偶者控除等申告書」もどちらも「所得額」で記載するようになっているから、、、ってだけなのですが、正直言って年末調整前の段階で正確な所得額を知ることなどほとんどできません。実際にも、ここは「見積額でよろしい!!」ってことになっています。いやいやだからさぁ、その見積額ってどうやって計算するの?って声が聞こえてきそうなので、解説しておくと、、、「所得金額は、年末調整を行う日の現況により見積もった本年1月1日から12月31日までの合計所得金額により判定する」ことになってまして、つまりは「扶」や「配」の用紙に記入している日に見積もった12月31日までの給与所得を書けばよいってことです。さらには収入額から所得額への引き直し計算は 国税庁のページで簡単に計算ができますので紹介しておきます。
こちらです⇒国税庁タックスアンサーNo.1410 給与所得控除
ページの下の方に、給与収入額を入れると所得額を計算してくれるボックスがあります。そちらに金額を入れて計算してみてください。
以上がルール変更になります。
ここを見落としてはいけない!!年末調整のチェックポイント!!
ルール変更の次は、変更が入った点もそうでない点も含めた気を付けるべきポイントについて説明していきます。新しいことは何もないのですが、知っているつもりでも結構忘れていたり曖昧だったりなんてことがありますからね、今一度確認してみてください。特に「税額」に影響がでるポイントは要注意です!!
金額に気を付けよう!!
⇒いうまでもありませんが、、、所得38万円を超える収入があっても所得控除ができる親族は「配偶者」だけです。他の親族で38万円を超える収入がある方は扶養親族からは外れてしまいます。お子様であれば給与額やアルバイト代(103万円以下)、両親等であれば年金額(65歳未満なら108万円、65歳超なら158万円以下)であることをそれぞれ確認しましょう。
もちろん、今年の変更点・・・給与所得者本人の所得額、配偶者の所得額の確認もお願いいたします。
年齢に気を付けよう!!
⇒改正が入ってからすでにだいぶ時間が過ぎてますが、まだ小さいお子様を扶養親族として記入されている方が見受けられます。残念ながら所得税の計算上は15歳以下のお子様は扶養親族にはなりませんので、記入することはできません。今年でいえば「平成15年1月1日以前に生まれた人」のみが扶養親族となります。
また、19歳以上23歳以下の人(平成8年1月2日から平成12年1月1日までの間に生まれた人)は「特定扶養親族」という扱いになります。☑を忘れずに入れておいてくださいね。
さらに、70歳以上の扶養親族は「老人扶養親族」に該当します。☑欄がありますのでこちらも忘れずにお願いいたします。
住んでいる場所に気を付けよう!!
⇒ここの確認がなかなか難しかったりするのですが、、、、要するに「同居」してなきゃだめなのかどうか?ってことですね。
基本的には「扶養関係」があれば扶養親族となるわけですから「同居」は要件ではありません。進学のために実家から離れた場所で暮らすお子様がいらっしゃる場合ですとか、実家のご両親の生活費をほぼほぼ面倒見てあげているような場合、は扶養関係ありということになります。ちょっと難しい言い方をすると「生計を一にする」といえるかどうかってことなのですが、それには同居は必須ではない、ということになっています。
ですから、国外に親族がいて、仕送りをして生活の面倒を見てあげているような場合、その親族も「扶養親族」に該当することになります。ただし、国外の場合は「親族関係を確認できる書類」(戸籍等)であったり、「送金実績がわかる書類」(金融機関での送金の事実がわかる書類等)を添付または提示する必要があります。
また、「同居している老人扶養親族」のうち、直系尊属(両親、祖父母等)については「同居老親等」に該当することになります。所得控除の額が変わってきますので要注意ですね。
健康状態に気を付けよう!!
⇒事故、病気、加齢などご本人や家族の状況はいつまでも不変というわけではありません。そして、何らかの理由で看護や介護が必要になったりすることは特別なことではありません。その典型例を障害者というくくりにしてしまうのは多少の乱暴さがあるようにも思いますが、ここは「控除」額を増やせますよという話です。該当するのであれば、ちゃんと控除を受けていくことが大事です。
給与所得者ご本人が障害者である場合にも扶養親族が障害者である場合にも控除額が変わってきます。扶養控除等異動申告書の中段あたりにある「C.障 害 者 、寡婦、寡夫又は勤労学生」の「障害者」の☑欄にチェックを入れて、その横の「表」に人数を入れる必要があります。「障害者」「特別障害者」「同居特別障害者」という項目がありますが、手帳の有無、障害等級、同居の有無で判断することになります。もっとも「障害者」に該当するというためには手帳は必須の要件ではないとされています(交付申請中の方であったり、申請のための医師の診断書はをもらっている方は該当するとして取り扱ってよいことになっています、参照はこちら)(タックスアンサー:障害者控除、)。
親族関係に気を付けよう!!
⇒親族ってそもそもどこまで?ってことも押さえておく必要があります。「はとこは?」「ひ孫は?」「甥っ子は?」「姪っ子は?」「配偶者の甥っ子は?」といろいろ聞いてみたくなるのでしょうが、ルール的には「『親族』とは、6親等内の血族と3親等内の姻族をいう」とされています。民法には「配偶者」も親族だよ~と規定されていますが、配偶者は税務上の計算方法が違うので、外されてます。で、それがどのくらいの範囲なのかといえば・・・・およそ顔を知っている親族はこの範囲に入ると思ってもらって間違いないですね。
血族(血縁関係でつながっている親族)で言えば、いとこの孫も親族ですし、姻族(婚姻関係でつながっている親族)でいえば、配偶者の「甥や姪」、「おじやおば」まで入ります。
親族というか、、、「現在の状況」を確認しなければならないのは「寡婦」「寡夫」についてです。
「離婚、死別、行方知れず」、、、配偶者との関係がこうなった方ご本人については、扶養親族や生計を一にする子がいるかどうか、所得がいくらかという要件を満たせば控除額が上がります。
なかなか年末調整担当者の方からは聞きづらいことだったりしますから、必ず確認が入るなんてポイントではありません。ご本人がしっかりと記入をしていく必要があります。
寡婦、特別の寡婦、寡夫・・・それぞれに要件があり、該当するものがあれば税金計算上優遇されます。扶養控除等異動申告書に正しく記載されていれば、給与支給時における源泉徴収額で反映されているはずですが、チェックを忘れていたり、年の途中で該当することになったりということもあります(タックスアンサー:寡婦控除、寡夫控除)。
集めるべき資料に気を付けよう!!
年末調整に関する資料は、基本的には集めれば集めるだけ税金が安くなります。理由は簡単で、集める資料のほとんどが「所得控除」に使える資料だからです。そして、だからこそ年末調整をすることで、先に徴収されていた所得税が一部「還付」になり、多くの方にとって「ちょっと嬉しい結果」になるのです。
<所得控除と集めるべき資料>
「生命保険料控除」⇒生命保険料控除証明書(一般(新・旧)、介護、年金)
「地震保険料控除」⇒地震保険料控除証明書
「社会保険料控除」⇒国民年金保険料控除証明書、領収書、国民年金基金控除証明書、国民健康保険等の支払額がわかる資料
「小規模企業共済掛金控除」⇒控除証明書
「住宅借入金等特別控除」⇒住宅借入金等特別控除申告書
証明書自体の提出(事業者側からすれば保管)が必須のものもあります(例、国民年金保険料控除証明書)。必須のものとそうでないものを意識した上で、提出又は収集してくださいね。
また、年の途中で転職し、転職後の職場で年末調整を受けられる方は前職の「源泉徴収票」が集めるべき資料になります。これがあると税額が増えてしまい、年末調整で「徴収」なんてことになる可能性があります。実際には税額が増えているわけではなく、本来払わなければならなかった税額が最後に徴収されているだけなのですが、気分的にいいものではないですが、しょうがないです。
それが嫌だからと言って、前職の源泉徴収票を出さなければ年末調整は見合わせるべきですよ~というルールになっていますから、、、。
また、勘違いが多いのが、医療費控除とふるさと納税です。どちらも年末調整では処理できません。年明けに確定申告をして源泉所得税を還付してもらいましょう!!
誰が支払ったかに気を付けよう!!
年末調整で集めて提出すべき資料のほとんどが、「給与所得者本人」が支払ったものに関する資料となっています。その方の税金計算上、支払った額を計算の基礎から除外するための資料になるわけですから当たり前といえば当たり前ですが、、、、。
ところが、上記資料のうち、社会保険料控除に関する支払いについては、「本人と生計を一にする親族が負担することになっている社会保険料を本人自身が支払った場合には、その支払った金額は、本人の社会保険料として控除できる」というルールになっています。つまり、実家暮らしではないけれど、扶養関係にあるお子様の国民年金を支払ってあげたら、それは支払った人の社会保険料控除に使えますということです。
年調担当者であれば気になること!?
さながら毎年の質疑応答のようになりつつありますが、質疑応答ついでによく質問される事項について書いておきます。
1、副業が就業時間外のアルバイト・パートであるような方の場合、年末調整はどうするの?扶養控除等異動申告書はどちらに出してもいいの?年末調整はしてもいいの?
2、今年12月中に退職する人はどうすればいいの?
3、今年入職した方で、前職が個人事業であった場合はどうすればいいの?
4、さらにはダブルワーク・トリプルワークをされている方で自社以外での仕事を年内にやめられた方の年末調整はどうすればいいの?
などなど、思わず手が止まってしまうようなケースです。
年末調整担当者であれば一度は遭遇したことがあるのではないでしょうか?レアケースではなく普通に出てくるような事例です。皆さん即答できますでしょうか?
解答を簡潔にまとめると、、、
1、⇒沢山給料をもらっている会社(事業者)にのみ扶養控除等異動申告書を提出し、そちらで年末調整を受けることになります。ただし、その従業員はもう一か所分の給与と合算した給与収入・所得額で確定申告が必要です。
2、⇒12月中に他の事業所からの給与が他にないのであれば年調可能です。
3、⇒年末調整してください。そして、その従業員は年明けに個人事業分と併せて確定申告をすることになります。
4、⇒他の事業者からの源泉徴収票(退職に伴うもの)があれば、全部合算して年末調整可能です。ただし、集めきれないことが多いのも事実です(時期的なものや事務がちゃんと機能しているか、なんてことにも左右されますから)。年末調整せずに「来年、確定申告してね」が実際のところは多い気がします。
まとめ
今年はルールの改正、資料の改訂などがあり、多少の準備が必要となっています。実は更なる変更が予定されてもいるのですが、とりあえず一つ一つ押さえていきましょう。
気になる方、一通りおさらいをしたい方はこちらを見れば大丈夫だと思います⇒WEB-TAX-TV(平成30年分年末調整のしかた【平成30年11月配信】)