準備をする
スポーツ選手のコメントで、よく聞くものの一つに「…に向けて、しっかり準備をしたいと思います。」というものがあります。
コメントを引き出すレポーターの力量によって、そこに付加されるコメントの量と質に差は出ますが、大きな試合や大会を控えた選手は大体こんな感じで締めますよね。
「多くの方が使っているから、自分も真似をしてとりあえず使っておこう」という選手がいないわけではないのでしょうが、おそらくは「準備の大切さを知っているから、、、つまりそれは、準備の質と量によって結果が変わってくることを誰よりも強く意識しているから」こそ出てくる言葉なのではないかと思っています。
私たちもこの準備の大切さを日々感じ、そしてそれを説明し、サポートして遂行してもらうことを仕事としています。
普段は経営者のお客様に決算申告・納税の準備であったり採用の準備であったり、はたまた税務調査の準備であったりを説明することが多いです。そして、税理士事務所のお仕事が一段落するこのタイミングでは少し先の将来の準備についてお話させていただくことも増えたりします。
例えば、会社の将来像から採用の話につなげていったり、後継者問題につなげていったりという感じです。また、相続対策全般についてお話しすることもあります。多くの方は、相続なんてまだずっと先だし、たいして儲かっていないから考える必要もないという反応なのですが、本当に必要がない方に相続のお話を振るなんてことはありません。多少なりとも、少しづつでもいいから考えておかないと後から大変になりますよ、という方にお話をするわけです。
税金の基本
法人税も所得税も、「利益」に課税するのが基本となります。損をしていたり、利益がないところに税金を課すということは、ふつうはあり得ないということです。そして、それは一定期間という時間的な区切りを設けて、その期間内に利益があったかどうかで判定します。通常その期間は1年で、所得税は1月1日~12月31日、法人税はその会社が決めた1年ということになります。
ところが、基本や原則なるものには必ず例外があるわけです。
利益が出ていなくても、自宅や投資用不動産を所有しているだけで固定資産税がかかります。法人や個人事業主には不動産だけではなくちょっと高価な物品にすら償却資産税という税金がかかります。これは利益に対してかかるという基本に対する例外です。
また、相続が起きた際にはそこに一定額以上の相続される資産があれば課税されます。これも利益に対して課税されるという基本に対する例外ですし、さらにそこで相続される財産は「継続的」に利益が蓄積されたものという解釈をするのであれば、それは「一定期間」という基本に対する例外にもなります。
「一定期間」の「利益」に課税するという基本は、納税者にしてみれば獲得した利益の一部を使って納税することになりますから納得感?もありますし、通常は資金の手当ても問題ないので、納税の実行性が高いはずです。これに対し、固定資産税や償却資産税は、直接的に利益やそこから生み出される現金と結びついているわけではなく、実行性や容易性という意味では少し落ちると考えらます。
そして相続税については、利益を上げているという実感も何もないところに課税されるという性質があり、そうだからこそ日々の財産管理に注意を払って過ごすということもなく気づいたら多額の税金を払わなければならなくなっていた、、、ということが普通に起こりえます。そして、相続税で一番怖いのは「資金手当て」がないケースがあることです。
相続税の特殊性
相続される財産があるから税金が課せられるというのが相続税における基本的なルールなのですが、問題は相続される財産の中身と額なんです。
お金そのものだったり、預金、相場のある金融資産などは、「財産」そのものですし「金額」もある意味客観的に決まっています。ほとんど「評価」の入る余地はありません。
ところが、不動産はどうでしょうか?
通常は不動産といえば「高額」な財産ですから、税金を払いなさいと言われればこれを換金すればよく「資金手当て」がないということにはならない、、、確かにその通りなのですが、その不動産が自宅であった場合、換金してしまえば、残される配偶者や子供たちはそこに住めなくなってしまうことになりますし、そもそも不動産を希望額で売るというのは不確定要素が多く、すべてのケースで資金手当てが万全であるというのは難しいかなと感じます。
そして、多くの経営者の方を悩ませる問題が、「自社株」の問題です。自社株は通常取引されることが想定されていません。経営者側からすれば、第三者になんて入ってきてほしくないでしょうし、買う側も同族零細企業の株なんて怖くて買えません。つまりは「自社株=換金できない資産」のはずです。
ところが、相続税を考える上では、「換金できない資産≠価値のない資産」とされています。つまり、「換金はできなくとも価値はある」と考えられているということです。自社株が「いくらなのか」については、いくつかの評価方法があるのですが、結局のところ換金できない資産に相続税計算上の財産価値を認めてそこに課税することには違いがなく、ケースによっては丸々資金手当てがないということが起こりえます。
だからこそ、”準備”です!!
経営者の方も、そうではない一般のサラリーマンの方も、相続税という税金で苦労するのはご自身達ではありません。残される方達です。
平成27年の相続税の改正により、相続税を納めなければならない方が増えているのは間違いありません(改正前4.4%⇒改正後H27は8%、H28は8.1%)。つまり、これまでより多くの「残される方達」が納税をしなければならなくなったということです(対象者が増えたことによる税収の合計額は増加(13,908億⇒18,116億)、ただし、一人あたりの税額は減少(2,473万⇒1,758万))。
参考:『平成27年分の相続税の申告状況について』⇒https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2016/sozoku_shinkoku/index.htm
『平成28年分の相続税の申告状況について』⇒https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2017/sozoku_shinkoku/index.htm)
東京、千葉、埼玉、神奈川などの都市部あるいはターミナル駅近郊に自宅をお持ちの方、同じく同エリアに投資用不動産をお持ちの方、長年ご自身で会社を経営している方、親族が経営する会社の株主になっている方、「もしかしたら自分が死んだときに、配偶者や子供たちに税金の件で迷惑を掛ける可能性があるかも・・・。」とうっすら感じている方などは、今現在わかりうる範囲の情報を使って、一度はシミュレートしてみるとよいかと思います。シミュレーターは大手銀行であったり、相続専門の税理士法人がWEB上で公開してくれています。
果たして自宅はいくらと評価されるのか?
投資用不動産の価値はどんなものなか?
自社株の評価はどうなっているのか?
知っておくだけでも、「準備」という意味では知らないままでいることとは随分違うと思います。
正しい準備のために、十分な準備のために、まずは現状を把握しましょう。
そしてそれはできる限り早い方がよいです。相続税は「時間こそが最大の節税策」ともいわれる税金です。早く知れるのなら早く知った上で大まかな道筋を考えることが、安心だけではなく結果にもつながるからです。
「準備の質と量」に加えて相続の場合は「タイミング」が結果に大きな影響を及ぼします。
十分な準備をしたいのであれば、「できる限り早く」という視点を忘れずにいていただけたら、と思います。
弊所では無料相談を行っております。まずはお声かけください