フードバンク×税金

国税庁WEBサイトの質疑応答事例に「フードバンクへ食品を提供した場合の取扱い」が追加されていました。フード(=食品)と聞くと最近は「消費税軽減税率!!」と反射的にかつかなり問題を狭い範囲で考えてしまっていることに気づかされました。それと同時にこのアナウンスが国税庁のWEBサイト、しかも実務家や事業として食品廃棄を自社(自分)のこととして考える方だけの目にとまるかとまらないかくらいにひっそりと行われていることにもったいなさを感じました。

私としては、ちょっと視点が広がり「税の視点から食料品の廃棄問題を考える」良い機会を頂いたような気がします。

コンビニエンスストアやスーパー、さらには飲食店から出るまだ食べられるのに廃棄する食品が沢山ある一方で、食べることに困っている人がいる。このおかしな状況を何とかすべく行われているのがフードバンク活動です。

フードバンクと税金

それで今回の質疑応答事例には、どんな質問と回答があったかというと、いろいろ端折ってごくごく簡単に申し上げれば、

Q.自社で廃棄する食料品をフードバンクに提供したら、損金経理でいいよね?
A.いいよ~。

ということになります。なんだか当たり前っぽいんだけど何が問題なの?という方に少々説明が必要ですよね。なぜ、こんな質問があったかというと、この食料品を提供する行為が「寄付金」として取り扱われてしまうと、一部の提供行為については損金として認めてもらえない可能性があり、そうなると自社で捨てたらすべて損金になるけど捨てるものを他人(他社)にあげてしまったら損金にならないということになってしまう…だからこそ、確認しておきたかった、ということなのでしょう。

もちろん、無条件ではなく、今回の食料品の提供行為は、

実質的に商品の廃棄処理の一環で行われる取引であること。

フードバンクとの合意書において、提供した食品の転売等の禁止や、その食品の取扱いに関する情報の記録及び保存、結果の報告などのルールを定めており、提供した食品が目的外に使用されないことが担保されていること。また、貴社において提供した食品の使途が確認できること。

国税庁の質疑応答事例から引用)

という二つの事情があるから、全額損金で良いという結論になっています。部外者が見たら、寄付なのか廃棄処理の一環なのかなんてまず区別はつきません。だからこその分かりやすい基準をたてておきたいという意識があったのかな、という気がします。これを受けてフードバンク活動を所管する農水省では、こんなパンフレットを作っています。
【食品関連事業者の皆様へ】食品ロス削減にフードバンクを活用しませんか?フードバンクに係る税制について

寄付金は寄付金としてルールに従って損金処理できるものとそうでないものが区別され、廃棄する食品を提供すればそれは損金になります。

まとめてしまうとたったこれだけのことです。でも、この応答事例が出ることで、経営上の不安が少しでも減ってくるのであれば、税務上も経営上も、社会的にも意義ある発表だったのではないか、少し大袈裟ですがそんな風にも思えてきます。

廃棄予定⇒再利用。この流れはまさに・・・

この問題はまさに食料品に関するシェアリングサービス(以前書いたこちらの記事を参照してください)でもあります。ですから、すでに余った側・捨てる側と必要な側をつなぐサービスを提供している事業者も出てきています。

・ 「OLIO」     あまったお惣菜をおすそ分け⇒https://olioex.com/   残念ながら海外のアプリですが、日本でも需要はありそうな気がします。

・「TABETE」    安全に食べられる状態なのに廃棄されてしまいそうな食材・食品をユーザーがレストランやお店に行って購入できるサービス。    ⇒https://www.cocooking.co.jp/food-sharing/

・「tabeloop」   規格外やきずものなどを生産者や食品メーカーから一般消費者等・レストラン等へ販売する⇒https://tabeloop.me/

・「Reduce Go」  登録されているレストランで余った食材を受け取れる⇒https://reducego.jp/

既にこんなサービスがあるんですね。そしてフードバンク活動と一部の目的を共有している活動ですから、当然こんなサービスもあります。 「MealConnect」  廃棄予定の食品がでたらフードバンクへスムーズに連絡する⇒ https://mealconnect.org/                     でも、こちらもまだまだ海外のお話です。いずれに日本にも入ってくるといいなと思います。

消費者サイドから見れば「もしかしたらお得に食材が手に入るかも」ですし、事業者サイドからは「廃棄ロスで売上につながらかった食材からわずかでも売上をたてられる」ことになりますし、そして「食料問題・廃棄問題」という社会問題に対する一定のソリューションにもなるサービスなのではないかと思います。まさに「三方良し」を地でいくこのサービス。行く末がどうなるのか、来年の動向もウォッチし続けたいと思ってます。

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