国税庁タックスアンサー解説 No.1415 給与所得者の経費計上(特定支出控除)
サラリーマンの経費
個人事業者は、税金の計算上、売上から経費を差し引くのに対して、給与所得者(サラリーマン)は経費を差し引くことが出来ません。
これは、サラリーマンは通常、仕事上に係る経費については企業が支出しているから、ということが挙げられます。
ただ、その代わりに「給与所得控除」というものを経費として差引くことが出来ます。
給与所得控除は、給料の額に応じて決められた一定額になります。
以下、現状の計算式です。(令和2年から変更となります。国税庁より引用)
給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額) |
給与所得控除額 | |
---|---|---|
1,800,000円以下 | 収入金額×40%
(650,000円に満たない場合には650,000円) |
|
1,800,000円超 | 3,600,000円以下 | 収入金額×30%+180,000円 |
3,600,000円超 | 6,600,000円以下 | 収入金額×20%+540,000円 |
6,600,000円超 | 10,000,000円以下 | 収入金額×10%+1,200,000円 |
10,000,000円超 | 2,200,000円(上限) |
実際には支出をしていない上記金額を所得税の計算上差し引けるわけです。
しかしながら、それだけでは個人事業者に比べてサラリーマンの経費に入れられるもののが少なく不公平ということで、給与所得控除のほかに、追加で経費にできる制度が特定支出控除です。
特定支出控除とは
以下6項目に該当する「特定支出」をし、その金額の合計額が先ほどの給与所得控除額の1/2を超える場合には、その超える部分の金額を給与所得控除後の金額(給与収入総額ー給与所得控除額)から更に差引くことが出来ます。
1 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出(通勤費)
2 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出(転居費)
3 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出(研修費)
4 職務に直接必要な資格を取得するための支出(資格取得費)
※平成25年分以後は、弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費も特定支出の対象となります。
5 単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出(帰宅旅費)
6 次に掲げる支出(その支出の額の合計額が65万円を超える場合には、65万円までの支出に限ります。)で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの (勤務必要経費)
(1) 書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用(図書費)
(2) 制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用(衣服費)
(3) 交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出(交際費等)
※令和2年以降は、勤務する場所を離れて職務を遂行するために直接必要な旅行で給与の支払者により証明された通常必要な支出(職務上の旅費)も特定支出になります。
また、これらの支出について勤務先の証明書、実際に支出したことが分かる領収書などの明細を確定申告に添付又は提示する必要があります。
特定支出控除の実際
しかしながら、これらの費用を会社から支給されていることも多いと思います。その場合はその支給分については差引いて考えなくてはなりませんので、こちらの制度は利用できません。
また、控除できる金額は、あくまで給与所得控除額の1/2を超えた部分のみですから、例えば150万円の給与収入がある場合、給与所得控除は65万円で、その1/2は325,000円となります。
それを超えた金額が控除されるわけですから、仮に40万円の上記6項目の支出があった場合には、75,000円の特定支出控除を受けられますが、この場合の所得税率としては5%になりますので、実際に浮く所得税額は75,000円×5%=3,750円のみということとなります。
150万の収入に対して、40万円の実費負担がまず大きい(約27%)ですし、その負担の割に抑えられる税額が3,750円と安いのです。
ですので、実際にはかなり使う場面は限られるのです。
ちなみに、2018年の特定支出控除の適用者数は1,704人とのことです。
給与所得者数はここ数年5500万人~5800万人と増加傾向にありますが、そのうちの1,704人です。約0.003%です。