国税庁タックスアンサー解説 No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金(具体例)
コラム(相続税のかかる財産)で少し触れましたが、死亡退職金は、被相続人が死亡の時点で所有していたわけではないものの、経済的効果が実質的に相続と同様であることから、みなし相続財産として相続税が課税されます。
そして、その受け取った退職手当金等のうち、500万円×法定相続人の数までの金額が、非課税限度額となり、課税されないこととなります。
相続税がかかる退職手当金等
どうやって取得:被相続人の死亡により取得。
どんな退職金 :被相続人に支給されるべきであった退職手当金や功労金など(退職手当金等)で、被相続人が死亡後3年以内に支給が確定したもの
誰が課税 :退職手当金等を取得した人
退職手当金等とは:受け取る名目にかかわらず、実質的に被相続人の退職手当金等として支給される金品。(現物支給含む)
死亡後3年以内に支給が確定したものとは:
①死亡退職金で、金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの。
②生前退職金で、金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの。
また、退職手当金等を誰が取得するのか、という点については、
①社内規定により指定されている受取人
②社内規定に無い場合は、遺産分割協議により決定した取得者
となります。
退職手当金等の非課税限度額
コラム(相続税が課税される死亡保険金)と同様に、退職手当金等にも非課税限度額が設定されています。
非課税限度額:500万円×法定相続人の数
死亡保険金の場合と全く同様です。
注意点も同様ですが、相続人が取得した場合のみこの非課税限度額が使えます。
つまり、民法上の相続人以外の人や、相続放棄者は使えません。
また、非課税限度額は、全体の合計額となります。
この合計額を、「相続人である」取得者が分け合います。
具体例
非課税限度額を超えて退職手当金等を受け取った場合の具体例です。
例1(相続人6人、うち養子が3人)
前提条件
被相続人:甲
相続人 :乙(配偶者)、A(子)、B(子)、C(養子)、D(養子)、E(養子)
退職手当金等:1億円
受取人 :乙 5,000万円 A 2,000万円 B 2,000万円 C 1,000万円
非課税限度額(合計額):500万円×4人(法定相続人の数)=2,000万円
法定相続人の数は、養子以外の相続人の数3人(乙、A、B)+養子(C or D or E)1人で4人となります。
法定相続人の数に算入できる養子の数は、別コラムで書きました通り、実子(この例ではAやB)が1人以上いる場合は、1人までとなります。
各人の非課税限度額:
乙 2,000万円×5,000万円/1億円=1,000万円
A 2,000万円×2,000万円/1億円=400万円
B 2,000万円×2,000万円/1億円=400万円
C 2,000万円×1,000万円/1億円=200万円
各人の課税される退職手当金等:
乙 5,000万円-1,000万円=4,000万円
A 2,000万円-400万円=1,600万円
B 2,000万円-400万円=1,600万円
C 1,000万円-200万円=800万円
例2(相続人5人、うち養子2人。放棄者あり)
前提:
被相続人:甲
相続人 :乙(配偶者)、A(子・相続放棄)、B(子)、C(養子)、D(養子)
退職手当金等:1億円
保険料負担者:被相続人甲
被保険者 :被相続人甲
受取人 :相続人乙 3,000万円、A 4,000万円、D 3,000万円
非課税限度額:500万円×4人=2,000万円
法定相続人の数は放棄があってもその放棄が無かったとした場合の相続人の数+養子の数となりますので、例1同様4人となります。
各人の非課税金額:
乙 2,000万円×3,000万円/6,000万円(Aの分を除いた退職手当金総額)=1,000万円
A 0円
D 2,000万円×3,000万円/6,000円=1,000万円
退職手当金等の非課税金額は、あくまで相続人に対するものであるため、相続の放棄をした人は相続人に該当せず(民法939条「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」)、相続税の退職手当金等の非課税の規定からも除外されます。よって、Aの非課税限度額は0円となります。(死亡保険金の非課税と同様です。)
そして、放棄をした人以外の非課税限度額は、放棄をした人の限度額を分け合う形となります。
つまり、放棄があってもなくても、非課税限度額の合計額(今回は2,000万円)は変わらないということになります。
また、退職金規定の定めにより受取人が遺族となっている場合は、死亡退職金は受取人固有の財産と捉えられるため、放棄者であっても受け取ることが出来ます。(相続税計算上は、上記のとおり相続財産とみなされます)