憲法、法律、条令、規則、政令、、、って何?

今国会(第196回国会)日程も大詰めとなり、「成立」した法案が増えてきました(第196回国会提出法案と審議状況・経過状況はコチラ⇒http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/menu.htm#05)。

今国会にも沢山の税金に関する法案が提出され、無事成立しています。

この税金に関する法案・・・つまり我々が仕事で扱う「税金に関する取り決め」は『法律』で定めなければならないということが「憲法」に定められています。

日本国憲法第84条 「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」

税金を課しますよ!、変更しますよ!というときは必ず「法律」で決めなければならないってことなんですが、そもそもそのこと自体が憲法に書いてあるということです。

そして法律だけでは実際の現場は回りません。法律は大雑把といいますか、細かいところまでは決められていないからなんです。そうすると、

その細かいところとやらはどうやって決まってくるの?

いやいや、そもそも法律ってなによ?そんなにエライものなの?

お役所のお役人が勝手に言っていることと何が違うの?

という疑問が出てきますよね。

そこで、今回は少しこの辺りについて書いてみたいと思います。

法体系はピラミッド!!

 

法体系を秩序立てて整理して、その序列を整理するとこんな風に整理されます。

ピラミッドの上に行けば行くほど法規範としての効力が強いですし、作るのも変えるのも難しく、かつ抽象度が高く、より広い射程(そのルールが適用される場面)をもつものとなっています。

簡単に言えば、、、「大事なもの順」ってことです。

憲法

なんで一番大事?なのか、、、説明する必要もないのかもしれませんが、憲法は日本国民の基本的人権を守るために存在しているから大事なんだ、そんな風に理解してもらえると分かり易いです。

一番大事なのは「基本的人権」でその人権をちゃんと護っていくために、それまでさんざん人権を侵害してきた国家権力を三すくみの形(「じゃんけん」みたいなもの。「三権分立」)で作りあげてるわけです。

国会が間違った法律を作って人権を侵害したら裁判所がその法律を「そんなのダメだよ」と否定する(違憲立法審査)。

行政府(内閣)が突っ走ったら国会が「またんかい!!行き過ぎやろが~」とけん制する(内閣不信任)。

裁判官がえこひいきなど「偏ったこと」をやってたら国会で「あなた裁判官失格ね」と裁判官を弾劾する(弾劾裁判)。

これがすべて憲法に書いてあるわけです。

そして「人権を守るために国家権力を制御する」ために作られているわけですから、このルール自体が国家権力によって簡単に変えられては意味がありません。それゆえ、憲法の改正はものすごく難しく、、、もうそれは無理ゲーレベルで定められてます。

その憲法に「税金を課すためには法律を作らないとだめだよ」と規定されています。これは安易に誰かの勝手な都合で「税金高くしま~す」と出来ないようにしたってことです。

行政府の行き過ぎた行為による国民の財産権の侵害を制度的に排除しているなんて言い方もできるかもしれません。

他方、憲法は納税を国民の「義務」(憲法第30条)と定めてもいます。税収がなければ国は借金をするか独自に事業をするかしか収入がなくなります。借金まみれも、国の事業によって民間企業が圧迫されるのも問題があります。ましてや行政サービスの恩恵(医療介護・福祉・教育など)をちゃんと受ける為の必要な負担はしょうがないです。でも、やりすぎることが無いように自分達で決めることができるってことにしておこう、そんな建付けになっているということですね。

法律

三すくみとは書きましたが、立法府(国会)は3権の中で最も重要なポジションにあります。そのことはその条文の数からもわかります。第41条~第64条までの「24条」もあります(内閣は第65条~第75条の11条、裁判所は第76条~第82条の7条)。自分たちの従うべきルールは自分たちの選んだ人たちに作ってもらう。だから安心して従うことができる。実際にすべてがすべてそうなのかは反論もあるかと思いますのでここでは置いておきますが、制度的にはそのようになってます。

よく耳にする民法、刑法、会社法、刑事訴訟法、民事訴訟法、それから税法各種もすべて法律、、、つまり国会で我々が選んだ国会議員さんたちが一生懸命考えて作ったものだから大事なんだよ、ということになっているということです。頭の良い人が作ったからだとか、内容的に優れているからだとか、人間的に素晴らしい人が作ったから大事なのではなく、自分達が選んだ方が作ることで、自分達の手で作ったといえる状態にあるから大事だよということなんです。

なお、県や市にも我々が選んだ方たちで構成される議会があってそこで定められるものは条例といいますが、これも代表者たちが議論して作った「自分たちが作ったルール」といえるものですから、地方レベルのルールにおいては一番大事なものとされています。そして地方税はこの条例による必要があることとされています。

政令・省令

次に大事なものが「政令」です。これは、国民が自分たちの手で作った、、、というものではなく、行政府(内閣)が出す命令です(日本国憲法第73条6号この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること)。法律だけではとてもではないですが細かいところまで規定できませんから、内閣や各省庁が法律を使える形にするために穴を埋めたり詳しく細かく決めて行く必要があり、それが政令や省令の形になります。

良く見聞きするもので分かり易いものとしては「○○法施行令」というものがあります。

告示

告示(こくじ)とは、国や地方公共団体などの公の機関が、必要な事項を公示する行為又はその行為の形式をいいます。内容としては、一方的に「こんなん決めましたから~」ということを伝えるもの、、、なのですが単なる伝達とは違うのが、結構つよめの拘束力(ルールに従わせる)力があるってことです。告示は種類がたくさんあって一義的にその効力を決めることが難しいらしく、立法的なものから単なる事実行為的なものまであるとされています。「公職選挙法上の投票区または開票区の告示」「学習指導要領」「常用漢字」などなど、多種多様な例があります。

通達・通知

通達・・・各大臣、各委員会及び各庁の長官が、その所掌事務に関して所管の諸機関や職員に命令又は示達する形式の一種。法令の解釈、運用や行政執行の方針に関するものが多い。
通知・・・特定人又は不特定多数の人に対して特定の事項を知らせる行為。(以上、国会図書館リサーチナビより引用)

要するに通達は役所の内部文書でルールなどを決めたり伝える文書ってことですね。通知は単なる役所からのお知らせ。

税金関係のお仕事をしていると、法、施行令、施行規則と並んで、、、いやむしろそれ以上に重要視されるのがこの「通達」なんです。

「通達」の意味を普通に解釈すればそれは役所間(行政機関同士)の連絡事項(もう少し強い感じはありますが・・・)を定めているもので、本来的には納税の義務を負っている日本国民を規律するものではありません。じゃぁ無視してよいかというとそんなことはなくて、こんな風に考えなさい、あんな風に取り扱いなさい、と書いてあるわけです。通達に。そうなればそう考えて動かざるを得ない、、、、。実際はこうなります。

「通達行政の問題」の一場面ですね。租税法律主義があって税法やそれに続く下位の法令にも書いていないようなことが「通達」に書いてある。これってルールに反してるってならないの?ってことなんですね。必要性が高ければ、許容することもやむなし、、、といったところなんですかね。

私たちの立場からすれば、法改正や裁判例が出たことに伴う通達などが少しでも早く手に取れる情報になってくれれば、問題はないのですが。

法人税法基本通達、所得税法基本通達などなど我々が見ていくべき通達はほんとにたくさんあります。そして実際にこれがとても大事なんです。

私たちがお客様に「この点は税務調査で指摘を受けやすいところです。『ルール』ではこうなってますから、このポイントとこのポイントには気を付けていきましょう」とお伝えするときの『ルール』はこの通達であることが多かったりします。

まとめ

税金に関するルールは必ずと言っていいほど毎年変更や追加があります。そのルールは上述のように法律で決めることになってますから、いざ「改正」が入ればそれは必ず国会で審議されることになります。ただし、細かい点は内閣を頂点とする行政(役所)で決められることになり、それを毎年毎年追いかけて情報を集めて理解していく(政令~通達など)。さらに疑義があれば私たちが照会などをかけることでより明らかにしていきます(個別通達)。

そんな追いかけっこ?を毎年毎年繰り返しながら、知識と情報のバージョンアップを図っております。

たとえそれが「、、、記憶にございません」「記憶の限りにおいては、、、」という声がリフレインのようにネットニュースやテレビで繰り返されるような中で成立した法律であっても、文書をなくしてしまうようなお役所やお役人の方たちが作った政令や通達であったとしても、です。

さらには、国や地方は、多くの方にとって大事な大事なお金や財産を「ルールだから・・・」の一言で徴収していくわけです。私たちはそのルールを理解し、お客様に説明していきます。さらには少しでも事業拡大につながる提案であったり、節税提案であったり、さまざまな提案をしていきますが、納税の意義を理解していただくためのご説明や納税のための余裕を持ったスケジューリングなどをしていきます。

ほんの少し、ほんの少しでいいので、納税者の気持ち(「本当は払いたくない、でもしょうがないという気持ち」)に寄り添って作られたルールであってほしいし、そのルールは自分たちが選んだ人が決めたものだから受け入れようという気持ちに素直になれるような、そんな代表者達であってほしいのにと思ってしまいます。

もうすぐ閉会する今国会についてそんな感想を持ちました。

<今年一番頂いたご質問>

「請求書も領収書も書類については、なくしちゃっても大丈夫だよね」

「なにか指摘があったら書類をなくしたことにすればいいんだよね」

⇒そういいたくなるお気持ちはよ~くわかります。

でも、それは本当にダメです!

書類の保存期間は原則7、欠損が出たら9、今年の4月以降の決算からは欠損時は10保管です。

分かりにくければ、とりあえず10年保管するつもりでいてください!!