最近は人が集まらなくて・・・
「今、採用はどうなってますか?」「人は集められてますか?」というお話を切り出すと、多くのお客様から「なかなか人が集まらない」「時給を高くしたり条件を良くしたりしないと応募すらない」という解答を頂くことが本当に増えてきています。人・求人・採用に関する情報は、人を収入や売上の必須条件としている事業(つまりほとんどの事業)経営者にとって、死活問題にすらなりうることです。人が採用できずに、仕事量を増やせず、結果として売上利益減になってしまったり、人件費の高騰でいわゆる逆ザヤになっていることに気づかずに何の手も打たずに経営を続けてしまったりが続くとどうなるか・・・?。考えなくてもわかりますよね。
まずは知ることから・・・、情報を集めて、、、と何度もこのコラムで書いてきました(「そもそも、知らなければ調べることもできないので」、「口は一つ 目と耳は二つ」、「1か月に1度くらいは、アンテナにかかった情報を深堀りしてみませんか?」など)。現在の求人・採用に関する問題は、今まさにそのスタンスが必要な場面ではないかと感じています。
「採用できない」「求人をかけても人が集まらない」「時給を上げてもなかなか応募がない」という現状を正確に理解し、乗り切るための具体的な対策や行動にまで落とし込む。
そのためにまずやるべきことは「知る」ことです。
知っておきたい資料2つ
帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2018 年 10 月)」
帝国データバンクの調査によれば人手が足りないと感じている企業は「過去最高」を更新し続けているそうです。 その割合は52.5%にも上ります。 これは、ごくごく簡単に言えば、半数以上の企業で「人手不足」感があるということになります。こちらは企業に「人手不足感」を調査したものになりますから、分かりやすく言えば「企業側の感覚でいえば・・・」を統計化したものになります。「感覚」だから「事実」ではないという言い方もできてしまうのかもしれませんが、採用は仕事が回らないという感覚が現場から上に上がっていき、それが数字(売上の伸び悩みや残業時間・残業代の増加)に現れなくとも、採用のための何らかのアクションにつながることが多いわけですから、「感覚」と「事実」はかなり近似しているといえるはずです。
その感覚ベースで「人が足りない!!!!」という企業が過半数ということになっていることをまずは意識する必要があります。
具体的には、業種による温度差、企業規模による温度差、正社員と非正社員の別など細かく見ていくことで、ご自身が経営する事業が属するセグメントの状況がどうなっているかをより正確に知ることができます。
このレポートによれば、大企業の方が中小企業に比べて人材不足感が強く(「正社員」大企業:中小企業:小規模企業=60.8%、50.3%、45.3%、「非正社員」37%:33.3%:32.8%)、
業種でいえば、正社員については、放送(78.6%)、情報サービス(74.4%)、運輸倉庫(70.6%)、建設(68.6%)・・・、非正社員については、飲食店(84.4%)、飲食料品小売(56.3%)、メンテナンス・警備・検査(55.7%)・・・となっています。
そして、今現在の状況を正確に理解するためには、「今までどうだったの?」も併せて理解する必要があります。つまり、 「これまではこういう流れだった」があって「今現在はこんな状況だ」を正確に知ることができるということです。 こちらの資料では、「過去最高」というヘッドライン(見出し)を使っているわけですから、これまでの流れと現在の状況を見ることができるデータも掲載されています。
正社員 | 非正社員 | |
2006 | 40.6 | 24.8 |
2007 | 35.5 | 21.4 |
2008 | 23.7 | 14.1 |
2009 | 15.0 | 10.5 |
2010 | 19.3 | 13.7 |
2011 | 22.9 | 15.4 |
2012 | 25.1 | 15.8 |
2013 | 33.4 | 21.6 |
2014 | 35.9 | 24.3 |
2015 | 38.7 | 26.2 |
2016 | 41.8 | 27.2 |
2017 | 49.1 | 31.9 |
2018 | 52.5 | 34.1 |
(帝国データバンク「特別企画 : 人手不足に対する企業の動向調査(2018 年 10 月)」より引用)
また、内閣府が出しているこちらの地域の経済2018によると「人手不足の地域格差」の現状とその理由がわかります。こちらは「有効求人倍率」や「労働力調査」といった統計的な事実から分析をしているものになります(企業側の「感覚」ではないということ)。内容はどうなっているかといえば、当然のことながら「人手不足」「人手不足」「人手不足」「人が足りないよ~」という時系列的な事実を地域ごとに比較し理由を分析しています。
こちらは政策につなげていくための基礎資料という意味合いが強い資料ですから、労働生産人口の減少、有効求人倍率の上昇、失業者数の減少、地域間の比較、から現状の把握、地域の特性などを導き出している内容になっています。他にも、もはや業種によっては欠かすことのできない外国人労働者(職種、地域)の現状についてもレポートがあり、つい先日から始まった入管法改正の基礎データとなっていたであろうことを考えても、こちらも見逃せない資料ではないかと思います。
知ったら次はどうしましょ?
知ったら次は、考えることになりますよね。需要(企業)と供給(求職者)のバランスからすれば、賃金・待遇面は上げざるを得ない。それが売上に直結したり価格に転嫁できるのであれば経営を危うくすることはないはずです。
ところが、そんな簡単な事業はほとんどありませんよね。事業の発展成長を目指しながら継続させていくのであれば、何らかの工夫が必要になります。
例えば、人の労働力を機械や設備に置きかえることはできないか?システムを新しくすることで少ない人数でも仕事が回る状況を作り出せないか?業務の見直し・・・例えば誰にでもできる仕事(単純作業や一定の事務)と特定の人にしかできない仕事(専門的知識や技術が必要な仕事)を切り分けてみるとか、そんな工夫が必要になります。
この人手不足がいつまで続くのか、東京オリンピックが終わったら一段落するのか、先行きは何とも言えません。ただ、間違いなく言えることは、人は減り続けるということであり、働ける人はもっとものすごい勢いで減っていくということです。採用の努力は必要ですし、そのためには「選ばれる企業になる」なんて目標も大事になってくるのかもしれません。
また、今回の入管法改正の審議入りをうけて、外国人労働者の現状についてよりしっかりと調べてみることも業種によっては必要になるでしょう。
いずれにしても、今この現状において何もしないことはそのことだけでもリスクになります。
「人手不足」「人が集まらない」を税理士がなんとかできる、、、、なんて大それたことは思っていませんけど、現状を把握し、その事実をお伝えすることはできます。そして、これからの対策についてご相談に乗ることはできます。営業と同じで採用や求人も「これをやれば絶対大丈夫」なんてことはないと思っています。でも「人をシステムに入れ替えると費用負担がこう変わる」という事実は割と高い確率で言い当てられるはずです(不確定要素・変数が多いと難しかったりします、、、)。
現状を何とかして、そして将来を変えていく、、、その準備のお手伝い、そんなことができればと考えています。
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